WAKU JEWELRY Blog

和久譲治のジュエリーブログ

 

WAKUコレクション(7)

 

コレクション(6)に続く、ナポレオン時代、オープンセティングの始まり

 

 

 

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(1)ゴールドペンダント、 ホワイト&ピンクトパーズ(裏表)、ブルーペイスト(センター)、19世紀初頭

 

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(2)裏面

 

 

(3)二重台座の中心パーツ

 

(4)参照

非常に興味深い作品です。二十年近く前に、ロンドン郊外ケンプトンで開かれる「サンバリー・アンティーク・マーケット」で出会いました。展示スペースでなく、出展者の持ち物から、一部が見えていました。あまりの色彩の美しさに驚き、交渉を始めました。フランス貴族の所有物であったと話していました。その時は、半信半疑でしたが、色美しい華やかさと重厚な石留に魅せられて、交渉の末、購入しました。その後、石留や文化史の知識も増えたころ、この作品のことが、解り始めました。

 

コレクション(6)の作品で観たように様に、18世紀の末、「open setting」が始まりました。箱のような台座の中に金属箔を入れ、台座の中に宝石を引掛ける溝を彫り込んで、金属箔を酸化させないように、宝石を入れて、360度宝石の上に金属をたたき被せ、蓋をするように石留したのが「closed setting」でした。「open setting」が始まっても、18世紀の石留と同じ様に、360度宝石の上に金属をたたき被せていたのが、コレクション(6)です。

やがて金属箔を使用しない「open setting」は、360度宝石の上に金属をたたき被せる必要もなくなり、石留も変化していきます。

写真(4)の(1)の様に、宝石に被せる部分だけを残して、残りを擦り落します。これの発展形が「Tiffany setting」になります。

19世紀初頭ナポレオン・アンピール様式の時代には、この新しい石留はシンプルに見え過ぎたのでしょうか、この作品は写真(4)の(2)の様に彫を入れたパイプが、写真(4)の(1)を取り囲んでいます。ナポレオン・アンピール様式の珍しい石留です。

また、円形とブルーを強調したデザインは、「雨による平衡の女神」(詳しくは形而下の文化史を読んでください)を表象したものです。同じ頃ナポレオンがジョセフィーヌに贈った「シャルルマーニュのペンダント」になぞらえたものだと考えられます。この「シャルルマーニュのペンダント」の中心は大きいサファイアです。

 

まだまだアンティークジュエリーの紹介は続きますが、次回はコレクションもう一つのラインから、シャネルの好んだ「Gripoix」や「Hobe'」などコスチュームジュエリーを取り上げてみたいと思っています。本当に美しい色彩の作品達です。お楽しみにしてください。

 

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