WAKU JEWELRY Blog

和久譲治のジュエリーブログ

 

WAKUコレクション(13)

 

Maison Gripoix

 

もう二十年近くなりますが、パリの中心部を離れた街の石畳を登りきったところに、小さなブティックですが贅沢な雰囲気に飾り付けられたショーウインドウを見つけました。引き付けられるように近づくと、洋服の足元にさりげなくこれと同じ薔薇のブローチが飾っていました。アンティークジュエリーやヴィンテージアクセサリーの買い付けを業者さんの委託でやっていたころなので、思わず店に飛び込んでいました。年配のマダムが出迎えてくれました。プライスカードもないので商品ではないと思いましたが、すぐに交渉に入りました。自分のコレクションなので譲れない、何度お願いしてもダメでした。珍しい初期のMaison Gripoixだと話していました。

あまりの綺麗さと熟練した職人芸は、いつまでも記憶にとどまりました。

何年かたってベルギーのコレクターが持っているのを見つけ、孝運にも手にすることができました。以来、自分の手元に持ち続けています。

 

 

 

シャネルやディオールとの仕事が始まり、シンプルなスタイルとテクニックに変化していきますが、この作品は職人の拘りが凝縮しています。

 

 

真鍮線で花びらを作り、その線にさらに細い線を巻き付けて、金属部分を全て手作りしています。ブランドとの共作では金属部分は鋳造に変わります。

それから色ガラスを金属部分に溶かし付けていっています。濃い色をさらに溶かし濃淡を作ります。商品作りに七年の修行が必要と言われる技術です。ロンドンでも同じ技術に挑んだ職人の作品を見せられたことがありますが、もさっとして、とても見られた作品ではなかったこともありました。

Maison Gripoix for Dior の作品もいずれご紹介します。

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